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Return to #6 - Documentary Film "Home"

(AERA 2002年10月28日より)   ( Kanji Link GeneratorPassword Required )

カメラがつないだ家族

引きこもりを抱えた家族は、何ができるのだろうか。ドキュメンタリー映画「home」では、家族の闘いがさらけ出されている。何が兄の心を開かせたのだろうか。

壊れてしまった家族を、どうにかしたい。「home」を監督したこばやし小林たかひろ貴裕さん(26)は、家族と対話をするために、カメラを回した。

兄のひろかず博和さん(29)は、7年間、引きこもっている。母は、暴力を振るう兄におびえ、うつ鬱病になった。祖母は末期ガン。父は争いに疲れ、家を出てしまった。

そんな家族から逃げるように、貴裕さんは東京へ出た。5年間、一度も長野県の実家へ帰らなかった。日本映画学校の卒業制作を作ることになり、貴裕さんは家族に向き合ってみようと思った。

後ろめたいから耐えた だが、いざ母親にカメラを向けてみると、

「いやだよぉ、なんで撮っているのよ」 と泣かれた。その様子も、撮影した。家族をさらし者にするのか。自己嫌悪に陥り、4日間、カメラを持てなくなった。 だが、撮るのをやめたら、家族から逃げ続けた自分を、また繰り返すだけだ。この状態を何とかして変えたい。せっぱつまっていた。 とはいえ、兄と話をすることが怖かった。兄の部屋に入ることさえ、ためらう。おそるおそる、外へ出るよう説得してみる。

「やりたいことをさがして、やればいいじゃん。もう一回、大学入り直せばいいじゃん」 そういうと、兄は声を荒らげて、殴りかかってきた。

「お前は何にも、わかっていないんだな。外に出られりゃ、苦労はないんだよ」 貴裕さんは、床に倒されてしまった。けんかする様子まで全て映画におさめられている。カメラという第三者の視点が入ることで、家族の関係は微妙に変わってくる。撮影は半年以上に及んだ。貴裕さんは東京と長野を何度も往復した。もしカメラを持っていなかったら、恥ずかしくて家族と真剣に話ができなかった。「撮らせてもらっている」という後ろめたい意識があるからこそ、兄にばとう罵倒されても、我慢強くなれた。かたくなだった兄も、貴裕さんの真剣さに心を打たれ、次第に心を開き始めていった。

「ただの怠け」から変化 東京では「BOX東中野」で、大阪では「シネ・ヌーヴォ」で。10月19日から公開されている。名古屋では来年1月からと、全国で公開される予定だ。 最初、貴裕さんは兄は怠けているだけだと思っていた。でも外に出られなくて一番苦しいのは、兄なんだと気づいた。だから映画のサブタイトルを「ひきこもってもいいじゃないか。ちょっと遠回りするだけだよ。」とつけた。

「だれだって、立ち止まる時期は必要だと思うようになりました」 と貴裕さんが真剣な表情で話した。すると横にいた博和さんは、笑いながら混ぜっ返した。

「冗談じゃないよ。引きこもっていたら、よくないよ。つらいんだから。何とか脱したいって、本人は必死で思っているんだよ」 引きこもっている状態が楽なのは、最初だけだ。外へ出られるようになりたい。そのきっかけを、必死で求めているのだという。小林家の場合、そのきっかけはカメラであり、弟の真剣さだった。 ラスト。兄はカメラを自分でセットして、家を出て行く決意を語る。弟も知らないうちに、その場面は撮影されていた。迷いながらも、覚悟を決める。真剣に向き合ってくれた弟や母への、自立宣言だ。貴裕さんは言う。

「家庭を壊した悪の張本人のようにしか見えなかった兄が、初めて本音を語った。引きこもっている本人の悩みや苦しみが伝わるのではないかと思います」 

編集部 (ひらおかたえこ平岡妙子)

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