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Return to #23 - "Hatcho miso and piles of rocks."

(中日新聞 2003年 5月5日 より)   ( Kanji Link GeneratorPassword Required )

修行中 八丁みそ職人 味づくりに 石に鍛えられ 染次一郎さん(34)

薄暗い味噌蔵にそびえ立つ、”山”に、頂点となる最後の石を慎重に置いた。岡崎市八丁町にある八丁みその老舗「まるや八丁味噌(みそ)」。

石積みは大豆でできたみそを熟成させるのに欠かせない作業だ。六トンのみそが入った木おけの上に、五トンの石を載せる。みそは三年間、石の重みに耐えて香ばしい味となる。

石は昔、近くを流れる矢作川から運んできたという。重さは最大だと一個五十キロもある。崩れ落ちないよう、円すい形にしっかりと積み上げるのが職人芸だ。四人一組でやっても、高さ二メートルほどの山を築くのに、一、ニ時間は掛かる。

みそは生き物。深さ二メートルほどの木おけに目いっぱい入れたみそは、湿度や温度の影響で夏と冬で高さが二十〜三十センチも上下する。それを抑え、熟成に欠かせない空気を取り入れるには、微妙なすき間ができる石積みが最適だ。

「同じように丸く見えるけど、石にはそれぞれ顔がある」。横、表、裏。どちらに向いているのか。形の特徴を瞬時に見分ける。山の底の中央に重心がくるようにし、くさび形のように積み上げていく。おけの微妙なくぼみや偏りも計算に入れなければならない。

「まだ石の顔がわからない。先輩が持ってきた石は、石と石の間にスポッと入るんだけど」。一九九九年十一月にパン製造会社から転職し、老舗の門をたたいた。「伝統の味の世界で働いてみたい」との思いから。三十一歳の時だった。 地方発送の業務から始め、次第にみその仕込みや石積みの作業を任されるようになった。 ニ、三十年やってわかるようになるという奥深い世界。石の重みは伝統の重みだ。ずっしりとくる手応えを受け止めているうちに、両肩と腰はがっしりしてきた。「自然と鍛えられた」と照れ笑い。

「石積みは特に疲れるけど、うまく積めると心地よい疲れがある」。充実感を覚えるのは仕上がったみそを味見する瞬間だ。「色、香りをみると、伝統のある仕事に携わっているんだなと思う」。入社して三年が過ぎ、自分で初めて仕込んだみそを最近、味わった。「うまいの一言。何とも言えないうれしさがあった」。格別の味だった。家族で囲む毎日の食卓にはみそしるが必ず上がる。「誇りを持っておいしいと胸を張れる味」ときっぱり。

とかく技術革新がもてはやされる時代は過ぎた。昔ながらのやり方が見直されつつある。「変わらないことを続けていくことが伝統。それを守るのが私の役目だと思う。次世代の人たちに引き継げるよう、それぞれの仕事を完ぺきにこなせるようにしたい」。   (服部聡子)

中日新聞 2003年 5月5日

関連リンク:YAMASAの八丁味噌ページ

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