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回転寿司 - ジョーシュ・ウィルバーさん(アメリカ、特別集中コース)の投稿記事

もう日本に住んで2年になるけど、どうも未だに日本食を作るコツが掴めない。やる気も今ひとつだし、向いてないみたいだし、正直な話、日本語が完璧に読める訳じゃないから買い物に行っても自分が何を買ってるのか良く分からないせいもある。そういった訳で、もしご飯とレトルトカレーか、ミックスピラフか、あるいはカップラーメン以外のものをどうしても食べたくなったら、その時は外食してるのが実情かな。たいていの場合、僕はまず友達に何がおいしいか聞くか、お店の「本日のオススメ」ってのを注文することに決めている。そうすることで、今まで数ある食べ物の中からちゃんと美味いものに有り付いてきたしね。例えば、神戸牛、広島のお好み焼き、盛岡の冷麺・・・。
アトムボーイ入口
アトムボーイ入口

今挙げたものは確かに僕の大好物だけど、これまでに"珍味"を勧められたことだって1度や2度じゃない。珍味と言おうかゲテモノとでも言おうか、つまり量はいくらでもあって、食べて食べられないものじゃなくて、何でわざわざそんなもの食うんだよっていうもののこと。珍味だなんて、実に上手い婉曲表現を思い付いたものだと感心する。サシミとかいう生魚の切り身は言うに及ばず、キャビアだってあれはチョウザメって奴の卵だし、他にニワトリの軟骨だの、牛の舌だの、生の肝臓だの・・・。未だに食べられないものがいくつかあるけど、実は結構楽しんで食べてもいるのだ。すっかり好きになってしまったのは、やっぱり寿司かな。

しかし寿司が好きになったと同時に厄介な問題もある。そう、寿司は値が張るのでなかなか食べられないのだ。(珍味とかゲテモノは得てしてそういう物だよね。)そこで、友達からYAMASAの近くに一皿100円の寿司チェーンの店が有るって聞いた時、僕は思わず飛び上がって喜んだ。そしてその2、3日後、友達を上手く丸め込んで(一人で外食するのは好きじゃないんです)、一緒にアトムボーイへ行くことになった。

店内の様子
店内の様子

ほとんどの日本のお店がそうであるように、ここでも中に入ると「いらっしゃいませー!!」の大きな掛け声。私はもう2年以上日本にいるので、こうした場面にも慣れているものの、たとえ笑顔で元気良く言われても、実際のところこれには毎度ながら面食らってしまう。

お馴染みのちょっとマニュアル的な「いらっしゃいませー!」という元気な声で迎えられても、この日は空席が出るまで少し待たなければならなかった。"珍味"を出す店ならたいていどこでもそうであるように、このお店でも食事をするために大勢の人が待っている。しかもこの安さだから客の入りは上々だ。やっと順番がまわってきて、僕たちはカウンターの席に陣取った。

パドック
パドック
回転寿司の仕組みをご存知でない方々のために、ここでちょっと説明しよう。店内は、寿司を握るスペースを中心にして、カウンターとテーブルがその周りを取り囲むように配置してあるのが一般的だ。ちょっと競馬場を想像してみて。要するに、コースを囲むVIP用の観覧席がカウンター席で、中央の芝の部分で板前さんが寿司を握るという位置関係になる。競馬の主役は馬だ。では回転寿司で肝心なコースの部分を走る主役は何かというと、実は寿司が2貫ずつ乗った小皿がグルグルとここを回っているのだ。だから自分が食べたいネタが回って来たところで、コース上の馬をとっ捕まえて自分の手元に置けばいい。あるいは、もし日本語で自分の好きなネタを注文出来る人なら、板前さんに直接頼んでそれを握ってもらうこともできる。食べ終わった分から皿をカウンターに積み上げておけば、お勘定の時には店員さんが来て「何皿だからいくら」と計算してくれるので、その勘定書を持ってレジへ向かい、そして代金を支払う。

カウンター席の目の前には何でも揃っていて、もしかしたらケチャップとマスタードだってあるかも。一般的には、醤油、アナゴに塗りたくるタレ、そして薄っぺらくスライスした生姜が置いてある。この生姜を時々口直しにつまむと、寿司の味が引き立つのだ。(聞いた話では殺菌効果があるとか。やっぱり寿司は生物だからね。)その他には、パックになったお茶っ葉、湯呑、そしていきなり熱湯が出てくる蛇口。そのお湯の熱さと言ったら尋常じゃないので、多分湯呑はスペースシャトルの機体と同じ素材で作ってあるはずだ。お湯の温度が飲んでも安全な程度に冷める間、目の前を行く寿司を眺めていると、
「何で得体の知れない海洋生物の肉や内蔵を、大豆の絞り汁に付けて食べるんだ?」
っていう疑問が改めて湧いて来るかも知れないね。

テールトゥーノーズ!
テールトゥーノーズ!

マグロを楽しみに待ってたのに、ちょっと見当たらなかったので板前さんを呼び止めて
「マグロ、おねがいします。」
と注文してみた。
「はいぃぃぃー!ヨロコンデーっ!!」
すぐに板前さんはそう返したが、「ヨロコンデ」って何???きっと寿司職人の世界だけで使うマグロを差す業界用語だろうと見当は付けられるけど・・・。何しろこの世界では"生姜"と言わずに"ガリ"と言うように、何かと専門用語があると聞いていたから。するとすぐに別の板前さんが、「ヨロコンデーっ!」と繰り返すので、「そっか、周りの皆に今自分が何を握ってるかを知らせるためだったんだ。」と合点がいきました。それに続いて、また別の板前さんから、そしてカウンターを片付けている人から、次々に「ヨロコンデーっ!」という声が掛かるので、なかなか見事な連絡網だと感心するほどだ。

僕のマグロが出される時にも「ヨロコンデーっ!」の連発を耳にしたが、たまたま隣の人がエビを注文した時にも「ヨロコンデーっ!」が店中を駆け巡ったので、せっかくマグロの業界用語を覚えたゾと得意になっていたのに、どうやらどうではなかったみたいだ。

友達の説明では「"ヨロコンデ"は"喜んで"だよ。注文してくれてありがとうってこと。」だそうだ。多分それが正しいと思う。そういうことにして私は食べ続ることにした。

注文を受けた時に限らず、板前さんたちのこの感謝を表す言葉は、何度も何度も耳にする。新しく寿司が出される度に「ヨロコンデーっ!」、そしてそこで働いてる人全員が順番に「ヨロコンデーっI」。まるで競技場のウェーブみたいだな。だから、もしかして観客も参加していいんじゃないかと思って友達に聞いてみたら、
彼はカニから取り出した緑色のものをあわてて飲み込んで言った。
「よせっ!絶対するなよ!」

「おおっ、いいネタが回って来たゾ。」
ウニの皿に手を伸ばしながら友達は言った。果たしてそれが一体どれほどいいものなのかちょっと訪ねてみたら、ウニは値の張る寿司屋では、2貫で2000円にもなる高級なネタだそうだ。それがたったの100円で食べられるのだから、これ以上うまい話はなかろう(でも、あの丸めたご飯に乾燥した海草を巻いて、上に茶色のどろっとした物を乗っけたものがか?確かに珍味には見えるけど。)

(また「ヨロコンデーっ!」が飛び交う。誰かがビールを注文したし、ちょうどメロンが運ばれて来たところ。掛け声もひときわ威勢がいいよ!)

寿司に関しては紛れもなく先輩といえる友達が語る。
「いいかい。これは安くていい物だ。いい物ってのは高いもんだろ。でもここなら100円だ。だからこれは安くて高くないものだ。もし他の店なら、これはきっと良くて高い物になるんだよ。その仕組み分かる?」

(また「ヨロコンデーっ!」の大合唱。どうやら家族連れが勘定に向かうみたい。)

ベルトコンベヤーに乗ってこっちへ向かって来る牛タンを横目で確認しながら、あれを10皿目にしようと密かに心に決めていた。何しろ9皿目に食べたウニの味が口に残って、生姜ですら効き目が無かったのです。いよいよ手を伸ばして取ろうとした時、何とこともあろうに6歳にもなっていないような小さな子供に、僕の寿司をさらわれてしまいました。前歯の無い顔でニッと笑って、自分の手元に僕の獲物を引き寄せると、すかさずそれをガツガツ食べたんです。僕は友達に泣き付きました。

「あの野郎が一皿しか回ってなかった僕の寿司を食いやがった。楽しみにしてたのにぃー・・・。」
「じゃあ、注文すればいいじゃないか。」
「そうじゃなくって、僕はあれが食いたかったんだよぉー。肉もデカかったし、タマネギの量も完璧だったんだから・・・。」
「そっか、そういうことなら今度奴が取ろうとしたのを横取りすればいい。あっ、それは無理か、奴のが順番が先だもんね。いいよ、じゃあ次に僕が欲しいのが回って来たら横取りさせてやるよ。」
「ちょ、ちょっと待って。それってまさか、僕にまたあのウニを食えってこと?冗談じゃないよぉー。」
「それじゃ仕方ない。僕は好きな物を食べる。」
「結局僕が満足出来る手は無いってことか・・・。」
「その通り。あっ、あのカニ取ってくれる?あの緑のやつ。ほら、ガキが狙ってるぞ。」
僕は次にはイカを食べました。どう言う訳かイカには切れ目が入れてありますが、それでも尚ゴムみたいな歯ごたえです。でも味は美味いですよ。僕は絶対にオススメします。

寿司の基本的な食べ方はと言いますと、箸を使わずまず寿司を手掴みにして、そしてネタの方にちょいと醤油を付けて一口で食べます。寿司は一口で食べられるサイズになっていますから、その点は心配要りません。ただし安心してはいけませんよ。たまたま一気に口に放り込んだ寿司が、わさび多目だったとしたら・・・。わさびの辛さは、火傷しそうな熱いお茶を飲んでも収まりませんからね。むしろ火に油を注ぐようなものです。決して快適な経験ではありませんが、しばらくおとなしく待っていればわさびの辛さは消えて行きます。意地の悪い友達なら、例えば今ここに居る彼のようなタイプなら、人が苦しんでるのを見てきっと大喜びでしょう。
「辛かったのか?」
「もうひとつの方食べる?なかなかイケるよ。」
僕はもう既に涙ぐんでいました。
「ううん。僕はサーモンとタマネギマヨネーズにしとく。」
「ちぇっ、臆病者め。」

その後2、3皿食べて、それでおしまいにしました。僕はもう生姜とお茶で満腹です。 

道路の向かいから
道路の向かいから

勘定をしてもらおうとすると、例の如く「ヨロコンデーっ!」と掛け声が上がるのですが、もう帰ろうとしてるのに本当にヨロコンデいるんでしょうか?僕たちは、2人だけで隣の5人家族と同じくらい食べたし、あの晩唯一の外国人客だったのに。結局「ヨロコンデーっ!」の正確な使いeヘ判らず仕舞いだったけど、それはアトムボーイをアトムボーイらしくしているし、僕は絶対また腹一杯食いに行ぞという気になっています。

アトムボーイへ行くにはまず国道248号線へ出て、デニースの反対側、マンダラヤビリヤードの近くです。営業時間は午前11時から夜10時まで。チャーハンとビールとソーダを除いて、全皿どれも100円です。でもメロンはどうだったかなあ?

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