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東大寺

東大寺は華厳宗の大本山。その始まりは、728年、聖武天皇が皇太子供養のために建立した金鐘寺までさかのぼります。741年、護国信仰に基づいて国分寺の建立を命じた際、金鐘寺を大和国分寺として金光明寺と改称しました。その4年後、金光明寺にて造営が開始され、それが東大寺となりました。当時は悪い疫病が蔓延するなど荒廃した世相だったため、鎮魂と救世の想いから巨大な寺院が建立されました。建設には15年以上を要し、1790年に再建された際、元の大きさの3分の2に縮小されたにもかかわらず、金堂(大仏殿)は、今なお世界最大の木造建築物となっています。

東大寺見物に訪れたなら、金堂を正面に見ることができる南大門から入るとよいでしょう。現在見られる南大門(国宝)は鎌倉再興時のもので、基壇からの門の高さは25m以上あり、日本最大の山門です。門内には高さ8mを超える金剛力士像が睨みをきかせています。この像は、鎌倉時代初頭の有名な仏師、運慶・快慶らによって造られました。1988年から5年の歳月をかけて行われた解体修復作業では、像の内部からは鎌倉復興を主導した重源上人などの名前が記された経典や文書などが見つかりました。 南大門をまっすぐ歩くと、間もなく中門の向こうに金堂(大仏殿)が視界に入ってきます。

「奈良の大仏」として親しまれている東大寺金堂の大仏は、日本最大の青銅製大仏です。仏像は56葉の蓮華座に座る盧舎那仏坐像(国宝)で、高さ約15m、顔の長さ約5m、重さは380tと推定されています。752年(天平勝宝4年)開眼。この年の4月9日、1万人以上の人々が東大寺に集まり、大仏開眼供養会が営まれました。この法要は、孝謙天皇、聖武太上天皇、光明皇太后が見守る中行われ、朝鮮半島の新羅の僧侶が華厳経を読み、インドの僧侶菩提僊那(ぼだいせんな)が聖武上皇に代わって開眼の導師をつとめ、大きな筆で眼を描き大仏に魂を入れました。

奈良の大仏
奈良の大仏
今年2002年、開眼1250年を迎えた奈良の大仏ですが、これまでに幾多の災難に見舞われました。855年、地震により大仏の首が落ちるという事故がありましたし、1180年には平重衡の南都焼き討ちで大仏殿をはじめとする伽藍の大半が焼失し、また、1567年には三好・松永の戦いで炎上しました。その度に修復再建がなされて現在の姿に至っており、大仏本体の大部分はその補修によるもので、開眼当時のものではありません。しかし、蓮弁には創建時の線刻画が今でも美しく残っています。三好・松永の戦禍で焼かれた大仏殿が再建されたのは被災後140年のことで、その間は露座のまま座っていました。

大仏の周りを見物していると、大仏の裏手にある柱に開けられた狭い穴を、窮屈そうに潜り抜けようとしている人を目にすると思いますが、どうか驚かないでください。この穴を通り抜けられたら、死後、極楽に行けると信じられているのです。大仏殿を出たら、正面階段のふもとにある八角形の灯篭に目をやってください。それらは東大寺創建時からあるとても古いものです。

金堂の西側、少し離れた場所に鑑真和上ゆかりの戒壇院があります。院内には、戒壇堂と千手堂があります。戒壇院の創建は755年(天平勝宝7年)とされ、東大寺戒壇院は日本最初の授戒の場所として建造されました。戒壇堂内部には、多宝塔を取り囲むかたちで、四隅に天平塑像の代表作四天王立像(国宝)が立っています。

金堂の裏、すなわち北側に校倉(あぜくら)造りの建物で有名なかつての東大寺正倉、正倉院があります。正倉とは、奈良時代から平安時代にかけて中央・地方の役所や大きなお寺などで宝物・財物を納めた倉のことをいい、正倉がいくつも集まったところを正倉院と呼びました。東大寺正倉院には、聖武天皇の遺品や、大仏開眼供養に用いられた法具などが納められています。現在では、天平期の正倉の中に宝物はなく、新しいコンクリート製の宝庫に、皇室の宝物として宮内庁管理のもと保管されています。

法華堂(国宝)

中門前から右手へ歩を進め坂を上っていくと、法華堂があります。法華堂は、東大寺境内に残る数少ない天平創建時の建築物で、740年から747年に造られたと推定されています。もともとは正堂・礼堂という別屋根の双堂(ならびどう)でしたが、鎌倉時代に礼堂が再建され、改築を経て現在見られるひとつ屋根の建物になりました。そもそも年代差が400年はあるふたつの建造物ですので、屋根をよく見れば、それにお気付きになるでしょう。法華堂は、三月堂、羂索(けんさく)堂とも呼ばれ、不空羂索観音像、秘仏執金剛神像(ともに国宝)などの諸尊像は、奥の正堂の方に安置されています。不空羂索観音は本尊、その両脇には静謐な姿で日光・月光菩薩が立ち、前方には金剛力士、本尊両横には帝釈・梵天、後方には吉祥・弁財天、そして四隅には四天王が立っています。これら13体は全て天平時代の像で、法華堂が「天平の宝石箱」と呼ばれるゆえんです。

二月堂(重要文化財)とお水取り

大仏開眼以来、一度も途切れることなく毎年続けて執り行われてきた法会があります。これは、かつては旧暦の2月1日に始められていましたので、2月に修する法会という意味で「修二会(しゅにえ)」と呼ばれます。そしてそれを執り行う場所として、二月堂の名があります。修二会は、現在では3月1日から2週間に渡って行われ、13日早朝に、本尊に捧げる1年間の閼伽水を井戸から汲み上げるところから「お水取り」の名でもよく知られています。二月堂は、実忠和尚(じっちゅうかしょう)によって8世紀に建てられましたが、1667年(江戸時代の寛文年間)、お水取りの最中に一度焼失しました。現在の建物は1669年に建てられたもので、内部の音響効果が優れていることで知られています。修二会は、本尊とする十一面観世音菩薩に祈りを捧げ、人間の欲望、怒り、無知などを悔い改める儀式として、752年に始まりました。この儀式は、正しくは十一面悔過(けか)といい、悔過とは人間が犯した過ちを仏に告白し、懺悔することをいいます。当時絶え間無かった疫病の流行や暴動は、人が過去に犯した罪に起因すると考えられていた時代には、こうした儀式は非常に重要な意味を持っていました。

修二会は、11人の僧侶が参加して執り行われます。この指名された11名の僧侶は、練行衆(れんぎょうしゅう)と呼ばれます。練行衆は、序列と、それぞれの役割に応じた名前を持っています。大きくは四職(ししき)と平衆(ひらしゅう)に分けられ、四職には、練行衆に心身の過ちを防ぐための制禁を説く和上(わじょう)、祈願を司る行法全体の導師大導師(だいどうし)、密教的・神道的な修法を司る咒師(しゅし)、そして平衆を率い修二会の進行を執り行う堂司(どうつかさ)があり、残りの7人が平衆です。練行衆は民衆の代わって仏に悔過を行う選ばれた僧侶であり、毎年12月16日に、翌年の修二会を勤める練行衆が発表されます。

修二会の本行は、3月1日から14日間行われますが、それに先立って、2月20日から2月末日まで、別火(べっか)と呼ばれる準備期間(前行)があります。これは、修二会で用いる火を世間と隔離し、また同時に練行衆全員が別火坊と称される東大寺戒壇院の庫裡に泊まり込んで心身を浄め、行いを慎しみ、本行までの間、物心ともに準備を整える期間です。この間に、お経の稽古、行中に仏前を飾る南天や椿の造花作り、紙衣(かみこ)作りなどを行います。別火は2月末日の午後に終わり、その後、練行衆は行列を組んで二月堂参籠宿所(さんろうしゅくしょ)へと移動します。14日間の本行の内、前半の7日間を上七日、後半の7日間を下七日と呼びます。二月堂の2体の本尊のうち、上七日は大観音が、下七日は小観音がそれぞれ本尊だとされています。本行は、日中から夜明けまでの1日を6つの時に分け、それぞれの「時」に、11人の練行衆が人々に代わり本尊に悔過し、罪の消滅とともに神と仏の加護を祈願します(六時の行法)。六時(6つの時)にはそれぞれ名があり、日中、日没(にちもつ)、初夜、半夜、後夜、晨朝(じんじょう)と呼ばれています。二月堂内の閼伽井屋の若狭井から香水(若狭水)を汲み上げる儀式「お水取り」は、13日の午前2時頃から見られます。古い言い伝えによりますと、お水取りの水が採取される若狭井の水は、遥か若狭湾から送られてくるといいます。奈良時代、実忠和尚が東大寺二月堂の修二会で全国の神々を勧請した時、若狭の遠敷明神だけが魚釣りをしていて集会に遅れました。明神はこれを深く詫び、その証しとして、本尊に若狭から香水を捧げることを約束しました。その時、二月堂の岩の中から黒と白の鵜が飛び立ち、岩から水が沸き出したということです。これが若狭水であり、井戸の名前もこの伝承に由来しています。

東大寺の法要と行事
除夜の鐘1月1日鐘楼にて
正月元旦・三が日1月1日〜3日大仏殿・二月堂にて
修正会(しゅしょうえ)1月7日大仏殿にて
節分・星祭り2月3日(立春の前日)二月堂にて
修二会(しゅにえ)3月1日から3月14日まで二月堂にて
仏生会(ぶっしょうえ)4月8日大仏殿にて
聖武祭(聖武天皇祭)5月2日天皇殿・大仏殿にて
俊乗忌(しゅんじょうき)7月5日俊乗堂にて
解除会(けじょえ)7月28日大仏殿にて
大仏さまお身拭い8月7日大仏殿にて
功徳日(およく)8月9日二月堂にて
万灯供養会8月15日大仏殿にて
十七夜・十七夜盆踊り9月17日二月堂にて
転害会(てがいえ)10月5日八幡殿にて
大仏さま秋の祭り10月15日大仏殿にて
仏名会(ぶつみょうえ)12月14日二月堂にて
良弁忌(ろうべんき)12月16日開山堂(法華堂)にて
* 東大寺は基本的に境内拝観自由ですが、大仏殿、戒壇院、法華堂内部の拝観は有料です。

東大寺へのアクセス

近鉄電車奈良駅から徒歩約10分
JR奈良駅から徒歩約25分

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