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雪まつり2

フランスチーム
フランスチーム

札幌雪まつりの最大の魅力の一つは、有名な国際雪像コンクール(1974年に始まったイベント)である。そして、このコンクールは幅広くの参加者(国内で働く人からアーティストまで、特にこのコンクールのために集まる人々)を魅了し、毎年、さまざまな国からおよそ24組のチームが参加している。そして、このコンクールがどのようなものなのかを考えるとき、一般的な広告を減らし、もっと参加者についてを取り上げたらどんなにおもしろいかと考える。このイベントは一種の競技、いわばコンテストであると主催者が宣伝をしている一方、出場者は極めて友好的であり協力的であることは、とても印象的である。

開催地を見てまわっていると、私は2人の"オーストラリア雪像協会(組合かも)"の人に出会った。その人たちは(その他の人たちもだが) 季節はずれの暖かい気温のせいで雪像に影響が出ていることに懸念していた。彼らは、終わった後にインタビューに答えてくれる事を了承してくれたので、私はそれまでの間、ススキノ会場の雪像を見てまわる事にした。

しばらくした後、私が先程の会場に戻ってみると、その二人のオーストラリア人はイライラの一日を終え、すでにホテルに帰ってしまっていた。そこで、ニュージーランドチームのメンバーやフランスチームのメンバー、そして地元ボランティアの人たちに協力してもらってジュリアン・ソルトとビクター・セバーグを探し出し、札幌の後楽園ホテルのDante's Bar に彼らを招待した。(ちなみにDante's Barの接客は悪いことで有名だ。)

ジュリアン・ソルトとビクター・セバーグ
ジュリアン・ソルトとビクター・セバーグ
デクラン:「ジュリアン、ヴィクター、今日はインタビューに来てくれて本当にありがとう。」
ビクター:「あなたがホテルの部屋に電話してくれた時、僕は床にばったりと横になってたとこだったよ。」
ジュリアン:「僕は完璧にインタビューのことなんか忘れてたよ。本当にイライラした1日だったからね。」

ここでビールを注文する・・・。

デクラン:「で、どこから始めようか。それじゃ、札幌で雪像を作っていない時、もしくはビールを飲んでいない時は、何をしているんだい?」
ビクター:「僕はプロの彫刻家で、画家なんだ。初めは絵を描いていたんだけど、そのうち小物を作って絵の前に飾るようになって、メディアを混ぜるようになったんだ。それに、クーリーのアーティスト達と一緒に仕事をすることもあるよ。」
ジュリアン:「僕は彫刻家。札幌で雪像を作っていない時は、そうだな、ジーロンにいるね。メルボルンから車で約1時間くらい行ったところにある街だよ。」
デクラン:「それは、君の出身地かい?」
ジュリアン:「そう。僕達は二人ともジーロンの出身。ま、実際のところ、同い年だから学校に通ってる時から互いの事は知ってる。」
デクラン:「メルボルンよりも、ジーロンの方が仕事をし易いということはある?つまり、シドニーやメルボルンみたいな都会では、彫刻家にとって仕事をするのに十分なスペースを確保するのが難しいでしょ。」

仕事中のジュリアン
仕事中のジュリアン
ジュリアン:「そうだね。スペースは重要な問題だと思う。だって、それは彫刻家にとって不可欠なものでしょ?やっぱり場所っていうのはね、いつも問題になるね。」
ビクター:「ジーロンなら少しは安いかな。特にメルボルンのすごく高いところに較べればね。僕は幸運だったよ。今、古いホールで仕事をしているんだ。そこはメルボルンからもそんなに遠くないしね。定期的に車で仕事場に行ったり戻ったりして、絶えず周りとの関係も維持してる。そうすることで、新鮮な気持ちを保てるしね。」
デクラン:「それにメルボルンはシドニーよりもずっと土地は安いんでしょ?だいたい半分っていったところかな?リッキー・スワローのような彫刻家がシドニーから現れない理由の一つは、土地が高いからじゃないだろうか?」
ジュリアン:「そうかも知れない。。スペースは、彫刻家にとっては本当に重要な問題だから。」
ビクター:「シドニーのアートシーンはちょっと違うしね。メルボルンの方はあまりハデな色使いはしないから。」
デクラン:「シドニーとメルボルンの劇場や映画が違うってことが反映してるように?」
ビクター:「たぶん、そうだと思う。メルボルンはもっとずっと近代的だと思うよ。」

デクラン:「ところで、さっぽろ雪まつりに参加するのは初めてでしょ?どんな感じ?」
ビクター「日本に初めて来た時は、もちろん言葉の壁にぶつかったね。でも、驚く事に、言葉にはそんなに苦労しなかったんだ。僕達は、手話をよく使って会話してるからかな。(笑)」
ジュリアン:「通訳してくれる人がいるのには、もちろんすごく助かってるよ。」
デクラン:「何か驚いた事とかは?例えば、初めて和式のトイレを使った時はどうだった?」
ビクター:「あ〜(笑)。時には慣れた文化の外に出なければならない時はあるもんだよ。それもおもしろみの一つさ。」

ビクターとカモノハシ
ビクターとカモノハシ
デクラン:「皆が注目する中で雪像を作っていくっていうのは、どんな感じ?君達は、普段はそういう状況で仕事はしないんでしょ?」
ジュリアン:「良い面もあれば悪い面もある。いい事は、子供たちがサインをもらいにきたり、地元のオーストラリア人たちが話しに来てくれたりすることだね。問題は、そういった一方で作品に集中しないといけないということ。特に、今年の気象は雪像造りに適してるとはいえない状況だから。」
ビクター:「仕事場では、観光客の応対をしてくれる人が少なくとも2人は欲しいね。だって、本当にたくさんの人たちが訪ねてきてくれるんだから。ひとつ言わせてもらっていい?以前、東京に住んでる留学生たちがオーストラリアチームとして参加していたことがあってね、彼らは彫刻家ではなかったけれども、とてもいいPRをしてくれたよ。だから、ここではオーストラリアチームの評判はいいんだ。」
デクラン:「カモノハシの評判はどうだい?」
ジュリアン:「最高。」
デクラン:「なんで、君達はカモノハシの雪像にしたんだい?」
ビクター:「ここにいるってことは、国を代表しているような気がするんだ。だから彫刻家個人の作品というよりは、むしろ自分の国を象徴しているものの方がいいと思ってね。たぶん、他のチームもそうだと思うよ。名寄での大会は、もっと芸術っぽいけど、ここでは楽しむことの方が大切なんだ。」
ジュリアン:「そう、だからオーストラリア独特の動物をテーマにするのがいいと思った。」

作品紹介
作品紹介
デクラン:「ここの人たちが、カモノハシについて知っているのには驚いたね。カモノハシは実在する普通の生き物だってことを。」
ビクター:「ええ。僕達のは周りの雪像よりもちょっと抽象的だからね。でも、人々は不思議に思って特徴を見てくれてるんだ。日本の人達はすごく教養があって、しかもここのアートにすごく関心を持ってくれているね。実際、ここでは皆好奇心旺盛に見えるよ。」
デクラン:「今夜すすきのを見てまわっていた時、まだ昼ご飯を食べてなかったことを思い出したんで、モスバーガーへ入ったんだ。」
ジュリアン:「モスバーガー?」
デクラン:「そう。日本で一番遅いファーストフードレストランってところかな。そこで、僕の隣の2人の若い女の子たちは中国語を勉強していたんだよ。そして、斜め前の男性はLINUXのマニュアルを読んでいたんだ。オーストラリアのハンバーガーショップでは、こんな光景は想像できないね。」
ジュリアン:「そうだね。それに、もしオーストラリアでこのようなイベントがあったら、翌朝会場に戻ったら、カモノハシのケツにビール缶が尽き立てられてるだろうな。」
ジュリアン:「それから、雪像造ってる最終に、こっちに向かって雪玉を投げてくる連中もいるだろうよ。オーストラリアでは彫刻家に対する敬意ってもんが足りないからね。日本では、なんか名誉に思うし、人々からの期待を感じる。」

デクラン:「雪を使って彫刻をすることになったきっかけはなんだい?」
ビクター:「ジュリアンのお父さんの友達かな。お手伝いってな感じから始まって、それから彼はすごく日本に来たがったんだ。」
デクラン:「それで、石とか木材とかとの違いは?」
ジュリアン:「技術は石や木材と似てるかな。ただ、違いは雪はすぐに作業をしないといけないことね。」
デクラン:「解け易いことを除いて、雪はどんな風か説明してくれるかい?そうだな。明確に何をどんな風に作り上げているのか、とか?」
ビクター:「そうだな、一つの雪の塊は縦3m、横3.5mなんだ。道に降り積もった雪とかを集めて凝縮したものだよ。良い雪なんだけど、道や公園から集めた雪だってことを頭に入れておいてね。だから、雪の塊はそれぞれ性質が異なるんだ。氷を含んでいる塊もあるし、塊の一部が違った堅さだったり、予期できないんだよ。」

カモノハシ
カモノハシ
デクラン:「素材の大きさは変えられないのかい?」
ジュリアン:「そうだね。与えられたもので作らなければいけないんだ。自分で選べないんだよ。それが、普通の彫刻と違うもうひとつの点だね。割り当てられた雪の塊を使って、割り当てられた場所でやるんだ。」
ビクター:「そして、割り当てられたものは、もちろん天気が変化すると変わってしまう。だから、早く考えて、それにう対応して調整しなければならないんだよ。」
デクラン:「大変なんだね。」
ビクター: 「全く大変だよ。しかも今年の気温は、季節外れに暖かいんだ。ちなみに今日なんて、この時期にしては29年間で一番暖かくって、6度にもなったんだってよ。」
ジュリアン:「ある時、僕たちが作っていたら足元が崩れてしまって・・・。すごく暖かいもんだから、雪が解けてきてしまったんだ。こんなに柔らかい材質のものなんか、今まで一度も扱ったことがないよ。」

デクラン:「ふたりとも以前に雪像を造ったことはないのかい?」
ビクター:「ないね。」
ジュリアン:「僕はオーストラリアのマウント・ビューラーで一度だけ手伝ったことがあるかな。」

ここでビールのおかわりを注文。

デクラン:「それは役に立ったかい?」

ジュリアン:「そうでもないね。」

デクラン:「練習はしたの?」
ビクター:「造ってる最中、しょっちゅう人に聞かれたよ。『どこで練習したの?』ってね。だから言ったんだ。『今、これがまさに練習中だよ!』って。」
デクラン:「自分たちが主催して、フォールズクリークかスレッボ辺りで雪まつりを開催しちゃったらどうだい?」
ジュリアン:「それをするならニュージーランドの方が適してるかな。さもなければ、巨大な冷蔵庫が必要だよ。オーストラリアでは、これほどまでには気温は下がらないから。あるとしたら、誰も簡単には行けないような辺鄙な場所だね。」
デクラン:「じゃあ、君達はスキーで山奥へ行って、そこで彫刻しても、誰も見てくれないってわけか。」
ジュリアン:「そういうことになりそうだね。オーストラリアじゃ、雪は結構高価なものだから。マウント・ビューラーだって、多くの雪はスノーマシンで作ってんだよ。リゾートはそんな貴重な雪を快く提供してはくれないでしょう。」

スウェーデンチーム
スウェーデンチーム
デクラン:「道具について一つ質問。雪を削るのに使う道具は、普段実際に使っている道具とは違うものかい?」
ジュリアン:「僕たちは主催者からいくつかの道具をもらったけど、表面をきれいに仕上げるのに充分なものではないかな。」
ビクター:「そ、だから伝統的なやり方で必要な道具を調達するのさ。人に頼んで借りる、勝手に借りる、あるいは盗む・・・(笑)。」
ジュリアン:「私たちの隣で作業をしていたニュージーランドチームもカナダチームもとても親切にしてくれたから、その点は助かったよ。」

デクラン:「そうか。熾烈な競争ってわけじゃないんだ。皆で助け合ってやるんだね。」
ビクター:「皆がって訳でもないんだけどね。ニュージーランドやカナダのように、似たような文化を共有しているチームはすごく協力的だったよ。」
ジュリアン:「それに、プロの芸術家として参加している人たちも。」
ビクター:「加えて、僕達はいくつか道具を持って来ているんだ。ジュリアンは家で物を作っていて、その道具は名前がついているんだよ。ほとんどはホラー映画から取ったんだけどね。例えば“ジェイソン”とか。」
ジュリアン:「何だかんだでオーストラリアから持って来た道具は25kgぐらいになるかな。

デクラン:「それでは、雪を削る事はどう?今夜、すすきの会場で私は雪削りを見ていたんだよ。そこでもやはり暖かい気温のために、似たような問題が起こってたかな。こんなことなら、オーストラリアでやったほうが楽なんじゃない?少なくても屋内で作業できるだろうしね。」
ビクター:「僕はカナダのシンポジウムにいって、アイスカービングをしたことがあるんだ。チェーンソーでだよ。グレン・スミス(オーストラリアのアイスカービングの技術者)とジョン・ブラッディ(オーストラリアの有名なチェーンソー彫刻作家)と一緒にいったんだ。すごく楽しかったし、良い経験になったね。」
デクラン:「ここではほとんどの参加者がアイスカービングの経験者だね。特にアジアからの参加者は。」
ジュリアン:「私は料理人だと思ってたわ。」
ビクター:「いやいや、ホテルに展示する氷像を造る仕事さ。」
デクラン:「つまり、ホテルでの結婚式とか歓迎会とかの?」
ビクター:「そう。」

リトアニア・チーム
リトアニア・チーム
デクラン:「費用の事について聞いてもいいかな?」
ジュリアン:「費用のどんな事?」
デクラン:「これに参加数するには結構な費用が掛かるんでしょ?」
ビクター:「費用はやはり深刻な問題だね。さっぽろ雪まつりは世界的に有名なイベントなのに、私たちは事実上まったくスポンサーがいないから。」
デクラン:「オーストラリア領事館からも援助はないのかい?午前中に見た韓国の作品は、それはもうとても素晴らしかったよ。それにはもちろん韓国領事館がスポンサーになってるんだけど。」
ビクター:「僕たちは、このコンテストに関係しているいろいろな団体に援助を申し込んでみたんだよ。オーストラリアのプロモーションにもなるし、観光産業にも貢献できるんじゃないかなって思って。」
ジュリアン:「でも彼らの答えは、『そんなことより、税金を納めるような身分になったらどうだい』とかなんとかだったよ。」
ビクター:「最終的に援助してくれたのは、日本航空だけだった。」
デクラン:「予想がつくけど、ちょっと寂しいね。」
ジュリアン:「日本航空は、半額航空券を提供してくれたんだ。他の費用のことを考ええたら、それだけでも本当にあり難い話だね。」
ビクター:「日本・オーストラリア財団は最後に連絡しくれたよ。夕食に招待してくれるって。」
デクラン:「(笑って)そりゃ素晴らしい。最高だ。」
ジュリアン:「ええ。お腹いっぱいたべたわ。」
ビクター:「しかも、色々話すことができたしね。」

デクラン:「補助金は、いつも問題になんじゃないかい?」
ビクター:「そう。オーストラリアでは、おそらくアーティストたちのなかで何かしらの資金が出ているのは10%にも満たないだろうね。他の国と比べると、よくもあり、悪くもあるって感じかな。」
デクラン:「彫刻だけで生活できてる人は本当にいるのかなあ?例えば有名なブルース・アームストロングやリッキー・スワローでさえも難しいんじゃないだろうか。」
ビクター:「おそらく無理だろうね。ビクトリア州なら、大規模な公共事業が行われるときはいつでもその予算の5%が創作物や芸術作品に充てられるから、それを手にできれば大きな違いになるけどね。」

名寄での作品
名寄での作品
デクラン:「そうですか。幸運を祈ってます。今日はインタビューに答えてくれてどうもありがとう。今回のカモノハシが解けてしまった後で、もし誰かがあなた方に連絡を取りたかったり、あなた方の作品を見たい時にはどうすればいいですか?」
ジュリアン:「それなら多分クィーンズクリフのスワン・ベイ・ギャラリーを訪ねてもらえればいいかな。」
デクラン:「さっぽろ雪まつりの次の予定は何か?」
ジュリアン:「次は名寄に行きます。」
ビクター:「そう。とても楽しみだ。名寄では海外から直接アーティストを募集してるんだよ。それにさらに気温が低いから、作品も良いものが出来ると思う。」
ジュリアン:「その後は大阪だね。それから東京経由で国へ帰ります。東京は、ただのストップオーバーだけどね。」

デクラン:「北海道観光は十分にできそう?」
ビクター:「是非そうしたいね。ここに昔から住んでいた民族は何でしたっけ?彼らは原住民でしょう?」
デクラン:「アイヌ民族だね。そう、彼らは少なくとも縄文時代、もしくはもっと前からの土着民族だよ。」
ビクター:「僕は美しい工芸品や、伝統的な衣装を小さなお店で見たんだ。」
デクラン:「本物もあるけど、多くは偽者だよ。北海道大学のキャンパスの中に興味深いアイヌ民族資料館があるんだ。カモノハシが解けたら、そこに行ってみても面白いかもね。多くの展示品は、サハリンからだけど、少なくともそれらはみんな本物だから。」
アメリカチーム
アメリカチーム
ビクター:「原住民族の問題は、他の国と似た部分がある?」
デクラン:「少なからずあるね。土地を追われた期間は結構長い。同じようなことがオーストラリアでも起こってるでしょ。ほら、民族のアイデンティティとかね。国勢調査では、自分達をアイヌ人とみなす人たちの数が増えているんだって。たぶん、2万5千人くらいかな。土地の所有権に関してもしばしばニュースになる。」

ビクター:「北海道の海岸線はどうかな?僕達は飛行機の上から少し見たんだけど、見物する価値はあるかな?」
デクラン:「もちろん。でも冬の真っ只中ではどうかな?函館は気に入るかもしれないね。そこは港の夜景がきれいだし、海岸にも近いよ。」
ジュリアン:「それは良さそうだ。」
デクラン:「もし機会があれば、見る価値はあると思うよ。さて、今日は色々聞かせてくれてどうもありがとう。そして、コンクールでの健闘を祈ってます。」
ジュリアン:「ありがとう。では、乾杯!」

2杯目のビールも空になり、写真を撮ってインタビューは終了。

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